▼ 5
「いっ……!」
京は後頭部を押さえ、顔を歪める。どさりと床に落ちたのはメモ帳だった。星矢と京はそれを視界に入れる。
「テメェ……」
「さっさと席について仕事を進めてくれませんか?」
「その前に謝ってくれないっすかぁ?」
刺々しい声で言い合う二人の近くで星矢は顔を引き攣らせていた。自分に向けられていた悪意が向けられることはなくなったが、これはこれで辛いと感じた。
「……えーと、室川」
「ん?」
京の視線が再び星矢に向けられる。静貴に向けていた鋭い視線ではなく、微笑みを向けられ、星矢はどきりとした。
「とりあえず仕事をやってから…それから話さないか?」
「俺と話してくれんの」
「え、うん」
「おっけー、じゃあ仕事すぐ終わらせてくるわ。あ、副会長俺にも紅茶」
「自分で淹れてください」
「副会長辛辣ー」京はぶつぶつと文句を言いながら給湯室に足を運ぶ。星矢はほっと息を吐き、再びかたかたとキーボードに指を押し込んだ。
[ prev / next ]
[back]