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「いっ……!」

 京は後頭部を押さえ、顔を歪める。どさりと床に落ちたのはメモ帳だった。星矢と京はそれを視界に入れる。

「テメェ……」
「さっさと席について仕事を進めてくれませんか?」
「その前に謝ってくれないっすかぁ?」

 刺々しい声で言い合う二人の近くで星矢は顔を引き攣らせていた。自分に向けられていた悪意が向けられることはなくなったが、これはこれで辛いと感じた。

「……えーと、室川」
「ん?」

 京の視線が再び星矢に向けられる。静貴に向けていた鋭い視線ではなく、微笑みを向けられ、星矢はどきりとした。

「とりあえず仕事をやってから…それから話さないか?」
「俺と話してくれんの」
「え、うん」
「おっけー、じゃあ仕事すぐ終わらせてくるわ。あ、副会長俺にも紅茶」
「自分で淹れてください」

 「副会長辛辣ー」京はぶつぶつと文句を言いながら給湯室に足を運ぶ。星矢はほっと息を吐き、再びかたかたとキーボードに指を押し込んだ。

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