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 逃げなければ。俺は三条を睨み付けながらずりずりと後ろに下がる。かたりと後ろで音がしたと思ったら、三条は俺の頭上に視線を移す。先程まで笑顔だったのが、一瞬にして無表情になる。ずり、と再び下がる。背中になにかが当たった。どきりと心臓が跳ねる。そして次の瞬間、首に腕が回った。ひっと情けない悲鳴が出る。傷がある腕には見覚えがあった。

「……よう、亮太」

 低く笑う男。この男は、高宮だ。

「俺の亮太に触らないでくれない?」
「あぁ? 誰がテメェのだよぶっ殺すぞ」

 もしかしてこいつらはグルだったのではと思ったら、なんだか険悪な雰囲気だ。しかし、高宮も俺の名前を知っていた。どういうことだかさっぱりわからない。

「亮太、少しおいたが過ぎたな?」

 くく、と耳元で囁かれ、目を見開く。――そんなことまでバレてるのかよ…!?

「ほんとにバカだよな、亮太は。プレゼントされたものに盗聴器とかいろんなものついてるのまったく気づかないし。全部分かってるのに必死に隠そうとしちゃってさ」

 くすくすと笑うその顔は、王子のようだったが、言っていることは恐怖でしかなかった。盗聴器とかいろんなものってなんだ……!?

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