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 俺は視線を戻す。やっぱり誰もいない。俺は鼻で笑うと、平松の背中を押した。

「う、わっ、ととと」
「なんもいねーじゃん。早く行こ」
「おかしいなぁ……」

 首を傾げ、なおも同じ場所を見続ける平松。幽霊でも見たのか、こいつは。――と馬鹿にして、俺もこの前知らないやつに見られていたことを思い出した。そして連鎖するように、手紙と空き巣のことも思い出す。
 俺は立ち止まり、眉を顰めた。

「…どしたの?」

 訝しげな声で訊ねてきた平松に首を振ってなんでもないと返すと、足を動かす。






「食べ過ぎた」

 デカプリンを計五個平らげた俺は、腹を擦りながら家に帰っている。いくらなんでも食べ過ぎたな。

「あのー」
「あ?」

 おっと。つい素で答えてしまった。振り返ると、パーカーを被った男がいた。眼鏡もかけている。

「こんにちは」
「……はあ、どうも」

 ……って、どっかで見たことあるなこいつ。

「あの、もしかして僕のこと覚えてませんか?」
「……あ、昨日の」

 俺はぽんと手を叩く。昨日、空き巣について俺に話しかけてきたやつだ。げ、まじで近所に住んでたのか。

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