▼ 12
はっと意識が浮上する。慌てて起き上がって周りを見回した。何ら変わりのないいつもの光景。朝になっていた。あの手紙を読んだ後、自分がどういう行動をしたか記憶がない。時計を見る。薄暗いと思えば、まだ五時だ。しかし寝る気が失せて、俺は再び寝転がると顔に両手を乗せる。――こんなしょうもねえ悪戯で悩むなんて、俺らしくねえ。
よし、と勢いをつけて起き上がるとスマホを手に取る。奴らからは十分に金を搾り取れたし、飽きていたところだ。奴らは捨てよう。…ということで、今遊んでいる奴らの連絡先をすべて着拒。そして消去し、すっきりとしたスマホが残った。
今日は必修科目の試験が終わった後、平松と約束している。デカプリンだ。俺は気分を入れ替えて、服を抜いた。
「あ、近藤」
「那須じゃん、なんでいんの」
「なんでいんのって、これが必修だからに決まってるだろ」
ほとほと呆れた、という顔で俺を見る那須。俺は肩を竦めた。
「冗談だろ、怖い顔すんなって」
「お前の顔冗談に見えないんだよ…」
溜息を吐きながら自分の席を探す那須。俺はその横に立って、ドアの横に張り付けられた紙を眺める。自分の学籍番号を探し、俺は口を開いた。
「あのさあ」
「んー」
まだ探している途中の那須は、今話しかけるなと言わんばかりの声で返事をした。
「俺、遊ぶのやめたわ」
「んー……って、は?」
那須が目を丸くして俺を見た。
「奴らとはもう一切連絡を取らねえ」
「ああ、そうか…いや、俺としては漸くか、ってとこなんだけど、いきなりどうした?」
「別に。飽きただけ」
「……それで捨てられた奴ら、かわいそうだな…」
ここで変な手紙が届いた、なんて言ってみても。こいつは絶対だから言っただろとかざまあみろとか、腹立つ発言をするに違いない。だからこのことは奴には言わない。俺は自分の席を見つけ、那須よりも早く講義室に入った。
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