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「これ、美味しいです!」
「そうか」

 向かいの席で口角を上げ、目を細める高宮。俺はにこりと笑ってパフェを掬い上げる。

「高宮さんも一口いかがですか?」
「……俺か?」

 口元に近づけると、一瞬困ったように笑うと、高宮はぱくっとスプーンに食い付いた。きゃあ、と周りで声が上がる。

「ん、甘いな」

 ……お前の顔の方が甘ぇよ。俺は内心げげ、と思いながら照れた表情を出す。

「……ほんとに食べるなんて」
「お前が与えるもんだったらそりゃ食うさ」

 思わずどきりとする。高宮の鋭い目は獲物を狙う獣のようで、俺は一瞬食われるのではと恐怖した。この感じは覚えがある。――そうだ、今日、あの男に……。

「綾?」

 はっと我に返る。高宮はじっとこっちを見ていた。俺は慌てて笑みを浮かべる。

「すみません、今日の試験、ちょっと不安で」
「ふーん、そうか」

 ……疑っている? いや、そんなはずはない。こいつは、――こいつらは俺のことを好きなんだ。俺のことはいつだって信じてきた。

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