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「……では、また明日」

 明日の待ち合わせ諸々の話や世間話を終え、通話を切った。時間を見れば帰ってきてからもう三時間も経っている。――疲れた。相手が大人だから気を遣わないといけない。いや、というか、色々面倒になってきた。そろそろ一人か二人捨てても良いかもしれない。
 ふあ、と欠伸をする。明日の試験の時間を確認し、服を脱ぐ。シャワーは明日の朝に入ることにしよう。着替える気も起きなくて、俺はベッドにごろりと寝転んで力を抜くと、目を閉じた。そんなに時間が経たない内に俺の意識は闇に沈んでいった。





「おはよう」

 にこりと俺の前で笑うのは、同じ学科で学籍番号が近い黒髪黒縁眼鏡の平松瞳だ。

「はよ」
「勉強した? 私さ、ちょっと怪しいところあって、教えてもらいたいんだけど」
「はあ? 今から? なんで前もって言わねえんだよ」
「バイトとか、いろいろあったの」

 ふうん、と返事を返す。バイトか。

「そりゃ大変だな」

 そして顔を逸らせば平松は、ちょ! と慌てた声を上げた。

「悪魔かアンタは! そんな綺麗な顔して悪魔か!」
「まあね。俺って綺麗だよな」
「え、うん……って自分で言うな!」

 ふふんと笑えば、平松は目をつり上げて俺に文句を言う。てかこんな綺麗な俺に対して悪魔って。失礼なやつだ。

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