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 別に王子様なんて関係ないけどね。俺がこいつを気に入っているのは金を持っているからだ。まあ勿論、金を持っていても不細工はお断りだけど。だってこの俺の横に相応しくないし気持ち悪い。

「あの、今日はどこに行く?」

 首を傾げて上目遣い。ぼっと三条の顔が赤くなる。それを見て気分がよくなった。

「綾くんはどこに行きたい?」

 綾とは言わずもがな、俺のことだ。ちなみにこれは偽名で、本名は近藤亮太という。なぜ綾なのかと言うと、綾という漢字はりょうとも読めるからだ。俺はプライベートでこいつらに関わりたくないし、後々面倒なことになる。だから個人情報は明かしてはいない。ま、こいつらの個人情報は俺が把握してるけど。

「うーん、実はこの前良いなって思ったアクセがあって、見に行きたいなって」

 えへ、とあざとく笑う。見に行きたいと言うだけでなく良いなと思ったと付け加えるのがポイントだ。こいつは俺を喜ばせるためにあっさりと金を出すだろう。

「うん、いいよ」

 三条がにこりと微笑む。俺は心の中で馬鹿にしながらありがとうと口にした。











「あ、ここだよ」

 店を指さす。普通の人が気軽に入る――ことはない高級店。ネットでリサーチし、俺好みのシルバーアクセサリーを見つけた。勿論バイトをしてるわけでもない俺が買える値段では到底ないので、こいつに買ってもらうのだ。

「へえ、ここのが好きなのか…」
「…似合わないかな?」
「そんなことないよ! さ、入ろう」

 うん、と笑う。そして俺たちは店に足を踏み入れた。


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