自業自得の籠の鳥

美人ナルシスト受け/性悪/クズ多め








 蝉がミンミンと鳴いている。まだ本格的に夏には入っていないが、今年は梅雨明けが早く、気温の上昇も激しい。
 そんな中で、俺は前期最後および試験直前の講義を受けていた。

「はあ、うっざいなぁ」

 この言葉は、蝉に対してでははい。俺は鳴り止まないスマホをじろりと睨むと、舌打ちする。俺の横で雑誌を読んでいた那須が首を傾げた。

「なに? どしたん」
「最近なんかしつこくてさ」
「……まさか、いつものあれ?」

 那須はひくりと口を引き攣らせた。俺が頷くと、那須は溜息を吐いた。

「あのさあ、もう止めたら? 悪趣味だよ」
「仕方ないじゃん、俺の美しさが罪なんだよ」
「いや、確かにお前の顔綺麗だけどさ」

 那須は俺の顔を見ながら肩を竦める。そうだ。俺は美しい。昔は自分の女顔にコンプレックスがあったし、女より男に交際を迫られることが多かった。そんな俺が自分の顔を好きになったのは、俺に迫ってきた男を周りに従えて貢がせたのが始まりだ。よく鏡を見ていたら、あれ、俺って美しくね? って思い、今では自分の顔が好きでたまらない。
 俺の趣味は言い寄ってくる男で遊ぶことだ。この趣味を知っているのは高校の時から付き合いのある那須くらいだ。

「俺の顔は皆に愛されるべきだろ? 俺はこの顔を奴らに提供している、そして奴らはそれに寄付してるってことだよ」

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