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「嬉しい。俺、陽一は俺と付き合う気がないように思ってたから」
「……でも、本当に僕でいいの?」

 不安になって確認すれば、広樹くんは大きく頷いた。でも、次の瞬間、暗い表情に変わる。

「ど、どうしたの…?」
「…俺、陽一に謝らなきゃいけないことがあるんだ」
「謝らなきゃいけないこと……?」

 心臓が嫌な音を立てる。広樹くんは伏し目がちに僕を見た。一体何だろう。気になるけど、少し怖い。

「俺は最初、陽一のことが好きじゃなかったんだ」
「……えっ」
「なんか陽一を見ていると胸がざわざわして、気分がよくなかった。だから……陽一に近づいたのは、決して友達になろうと思ったわけじゃないんだ」

 僕は絶句した。そんな。僕はむしろ嫌われていたということなのか。ショックを受ける僕に、広樹くんは慌てて言葉を続けた。

「でも、信じてほしい。俺、今は本当に陽一が好きなんだ」
「……なんで、なんで今それを僕に?」

 震える声で告げると、広樹くんは少し間を置いた後、口を開いた。

「……黙っているのが辛くなったんだ。それに、高木が陽一にいつかばらすような気がして。それなら自分の口から言って、ちゃんと謝った方がいいだろ?」
「…高木くんは知ってたんだ」
「まあね。あいつとは色々あったから今じゃ仲悪いけど」

 

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