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「……よお、奇遇じゃん」
クラスメイト――高木くんは人を馬鹿にしたような顔で笑った。僕は恐る恐る広樹くんを見る。そして、ひっと小さく声をあげてしまった。広樹くんは感情が抜け落ちた顔で高木くんを見ていた。だけどその間に挟まれている僕は、一瞬それが僕に向けられたものだと感じた。
こんな広樹くんの顔初めて見た、と思って、いや、と思い直す。一度だけ見たことがある。夢の中でだけど。
「…何してるの」
「何って、七瀬と話してただけだけど? クラスメイトなんだ、会ったら話くらいするだろ」
高木くんはなあ、と僕に同意を求めてくる。僕は困った。今までなら高木くんが僕を見かけたとしても、話しかけなかったはずだ。だけど、話しかけてくるようになったのは広樹くんが関係しているだろう。もしかしたら今日広樹くんがいることを予想していたのかもしれない。だからこの場に留まったのだ。
「なんで……――陽一に何かしてないだろうな」
「だから話してただけだって言ってるだろ」
苛立ちを含んだ声。僕はどうしたらいいかわからなくて、二人を交互に見た。広樹くんは僕に顔を向ける。あの甘い顔に戻るだろうと思ったけど、表情は変わらなかった。
「…陽一、行くよ」
「え、でも僕、まだ本が――」
「行くよ」
「おー、こわ」
ふ、と笑う声。僕は震える手で本を置いた。広樹くんが怖い。今の冷たい声は、僕に向けられたものだ。僕は広樹くんに近づく。
「おい、七瀬。俺の言ったこと覚えとけよ」
高木くんが僕の背中に向けて言葉を放った。
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