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「……こうすれば人が寄ってこないと思って」
僕は、あっと声を出す。帽子にマスク、そしてサングラス。芸能人の変装みたいだ。もしかして、僕のために? っていうのは、自意識過剰だろうか。
「でも、暑いでしょ? 外した方が…」
「うん。マスクはさすがに外す」
くぐもった笑いの後、広樹くんはマスクを外した。ふう、と息を吐くと、口角を上げた。目は見えないけど、柔らかい笑みを浮かべているんだろうなと思った。
「よし、行こうか」
「うん」
頷いて歩き出す。――僕はほっとしていた。広樹くんは普通だ。今まで通り、優しい。クラスメイトが言っていたことは嘘だと信じたい。
「あ、本屋に寄っていい?」
「うん。僕も買いたい本があるんだ」
昨日発売された本。広樹くんが言わなければ僕が提案していた。
「ここの近くにあるっけ……ああ、あった」
本屋を指差し、そっちに足を向ける。僕はうきうきと心を踊らせた。
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