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それからのことは、正直あまり覚えていない。人生初の告白を受けてしまった。しかもそれが男。付け加えると、まだ出会ったばかりの人だ。僕は気が付けば家にいて、母親に不審そうに声をかけられるまで、玄関に棒立ちだった。
ベッドにごろりと横になりながら深いた溜息を吐く。――どうしよう。最初こそ広樹くんを鬱陶しく思っていたけど、今では好意を抱いている。もっとも、この好意は恋愛感情ではない。僕は、友達として広樹くんが好きなのだ。でも、それを広樹くんに伝えてしまったら。告白を断ってしまったら――関係は、どうなるんだろう。気まずくなって、自然と疎遠になっていくのかな。我儘だと思うけど、付き合うのも、疎遠になるのも嫌だ。
「そもそも、なんで僕のことを…?」
疑問が頭に浮かぶ。僕は広樹くんみたいに顔立ちが整っているわえけではない。特に秀でたものはなく、強いて言えば良いところが真面目なところ、だろう。僕が広樹くんなら、こんな男嫌だ。
「もしかして、ブス専とか…」
口元を引き攣らせる。そうだ。広樹くんは初対面の時から僕のことを見てきた。自意識過剰かもしれないけど、一目惚れとか…。いや、まさか、そんな。
僕は考えを断ち切って、目を閉じる。それから間もなく、僕は意識を手放した。
「あの、広樹くん……ごめん、僕、広樹くんとは付き合えない」
僕は広樹くんに頭を下げる。すると、頭上から鼻で笑うのが聞こえ、そっと顔を上げる。広樹くんは僕を嘲笑うように見ていた。
「なに、俺が本気でお前に告ったと思ってるの?」
「え……?」
「冗談に決まってるじゃん。なんでお前みたいなやつ好きにならなきゃなんないんだよ」
「ひ、広樹くん…?」
「きもいから名前で呼ばないで」
広樹くんはにこりと笑った。しかし目が笑っていないし、声はすごく冷たかった。――嘘だ。広樹くんが、こんなこと言うはずが…。
「もうお前飽きたからいいや。じゃあね」
そう言って広樹くんは踵を返す。僕はその背中に必死に呼びかけた。でも広樹くんは振り返らず――。
そこで、はっと目が覚めた。アラームが煩く鳴っている。僕はびっしょりと汗をかいていた。
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