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 玉子サンドは美味しかった。ただメロンソーダじゃなくて、他のものを頼めば良かったと後悔した。あと、食べている間僕は全然話を振ることも返すこともできなくて、申し訳なく思った。でも広樹くんは一度も退屈そうにはしなくて、始終にこにこと笑っていた。それが僕の心を軽くした。

「結構ボリュームあったね」
「うん」

 頷いて、しまったと再び落ち込む。ここで、うん、って返すから話が続かないんだ。――でも、何を言えばいいだろう。僕は誤魔化すようにメロンソーダをのんだ。甘ったるい味が口いっぱいに広がる。

「陽一は甘いものが好きなの?」
「あ、うん。……え、ええと、広樹くんは?」
「俺? んー、別に嫌いではないけど、凄く好きなわけではないかな」

 さっきの失敗を思い出し、今度は話を続けてみた。そうか。じゃああんまり甘いもののお店に連れていくのは良くないか。――また遊んでくれる前提だけど…。

「そっか。陽一が好きなら、今度うちの学校の前にできた店に行こうよ。パンケーキの店で、結構人気らしいんだ」
「あっ、い、行きたい! いいの?」
「勿論。俺、陽一が喜ぶならどこへでも行くよ」

 どきっとする。……広樹くんって、結構タラシだなぁ。僕なんかより、女の子に言えばいいのに。でも、僕はそんな広樹くんの言葉にさっきから喜んでいるんだけど。

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