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 玉子サンドを見て、あ、美味しそうと呟く。それに広樹くんがにこりと笑みを向けてきたので、思わず僕もそれにすると言ってしまった。いや、別に嫌いなわけではないし、実際本当に美味しそうだからいいんだけど。
 ボタンを押すと、店員が速やかにやってきた。先ほど僕たちを案内してくれた男性店員だ。

「ご注文をお聞きします」
「メロンソーダとコーヒー、あと玉子サンド二つ」

 言うタイミングを窺っていたら、僕の分まで注文してくれた。注文を復唱され、間違いがないかという問いに頷くと、店員は去って行った。

「ふう、やっと落ち着いたね」

 広樹くんは困ったように笑うと、話しかけてきた。僕も苦笑を返し、広樹くんも大変だねと告げる。

「よくあるの?」
「うーん、まあ、ちょくちょく…? あ、でも、今日はなんか凄かっただけでだからね」

 本当だろうか。僕は訝しげに広樹くんを見る。広樹くんは慌てたように、本当だから、と何回も言ってくる。いや、別にそこまで疑ってないんだけど……。

「そうなんだ」
「うん」

 それきり会話が途切れる。僕は気まずくて、店員が持ってきた水を飲む。

「陽一、今日は来てくれてありがとうね」
「あ、僕の方こそ…誘ってくれてありがとう」

 広樹くんがあまりにも嬉しそうに言うので、僕は胸がいっぱいになった。

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