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 メールでさえ送るのに時間がかかるのに、電話をさっととれるはずがない。僕は鳴り続ける携帯電話をただ見つめるばかりだ。携帯電話は早くしろと僕を急かしてくる。

「え、ええい!」

 僕はぽちりと通話のボタンを押した。どきどきしながら声を出す。

「も、もしもし…」

 うわ。震えてしまった。と思ったら、向こうから深い溜息が聞こえてびくりとする。

『ああ、良かったぁ。出てくれないかと思った』
「あ、ご、ごめん…」
『ん? いや、こっちこそいきなりごめんね』
「え、えっと…何?」

 両手で携帯電話を握り締める。そのまま自分の部屋へと駆け込んだ。親がリビングに入ってきたからだ。ばたばたとした音が聞こえたのか、広樹くんが驚いたような声を出した。

『どうしたの? 大丈夫?』
「だっ大丈夫!」

 見えていないのに、こくこくと頷く。ベッドに座りながらソワソワと視線を漂わせた。

『あのさ、さっきのメールだけど』
「……うん」

 さっきのメール。もしかして僕、何か変なこと書いちゃった? ていうか、遅くなったこともう一度謝った方がいいかな。

『いつ遊びに行こうか。あ、それと敬語じゃなくていいよ』
「ぼ、僕はいつでも暇だから……」
『そうなの? 俺も』

 う、嘘だぁ。広樹くん、暇そうに見えない。


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