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 広樹くんからメールが来ていたのを知ったのは家に帰ってからだった。というのも、僕は学校に携帯電話を持っていかないからだ。お風呂からあがって、ふーっと息を吐いた時に、ちかちかと携帯が光っているのを見つけて手に取る。どうせ迷惑メールか、それの類いのだろう。だからそんなに慌てずに携帯を開いて――目を見開いた。

『おはよう、陽一。今度、遊びに行かない?』

 驚いた。連絡先は交換したけど、まさかこんなに早くメールがくるなんて。それに、この内容。遊びに行かない? だなんて。僕は嬉しくてへらりと笑みを浮かべた。
 ……っは。待って、おはようってことは。
 僕はそろりと受信した時間を確認する。朝の十時。そして今は午後九時だった。慌ててメールを作成する。
 しかしメールを書く機会なんて全然ないので、何を書いたらいいか分からない。とりあえず、遅くなったことを謝らないと。

『すみません、遅くなりました。今メールを確認しました。今度って、いつでしょうか。陽一』

 ――分からない。こんな感じでいいのかな。何度も読み直し、えいっと送信する。僕は携帯電話を握りしめたままドキドキと返信がくるのを待っていた。

「っわ!」

 ブルブルと手の中のそれが震え、僕は飛び上がる。は、早い! 確認しなくても、僕はこれが広樹くんからだと確信していた。

「って、え、え、電話……!?」

 とりあえず震えなくなってから読もうと思ったら、ずっと鳴り続け、不審に思った僕は携帯を開き、目を丸くする。メールではなく、電話だったのだ。もちろん相手は広樹くんだ。

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