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「何考えてんだ、お前」
訝しみながら大石――あー、巽、だったか? を見ると、顔が強張った。それも一瞬のことで、直ぐに無表情になると言った。「いや…」
その濁した様子が何故だか気に食わなかった俺は、ずいと体を近づけてもう一度何を考えていたかを訊いた。
「何だよ」
「別に何もない。万里は気にするな」
「気にすんじゃねえ。あと名前呼ぶな」
「何で呼んじゃいけないんだよ」
「なんとなくだ」
なんじゃそりゃと更木が呆れ顔でツッコむ。なんとなくはなんとなくだろ。これといった理由なんて特にないけど、何だかムズムズするから嫌なんだ。
「連絡、取れないの? 連って人に」
更木の一言に俺は固まる。ぽかんと口を開けたまま停止している俺に更木が首を傾げた。
「ど、どうした?」
「……忘れてた」
「え」
「…ちょ、っと待て。今連絡してみる」
「瀧口…」
残念なものを見るような目で見られ、凄く居た堪れなくなった。わ、忘れてただけなんだ! いきなりのことで動転してたからな。
ポケットから携帯を取り出してアドレス帳を検索していると、いきなり手の中で震え出す携帯。
「おわっ」
画面に表示されているのは連という文字。まるで見ていたかのようなタイミングだ。……どっかに盗聴器を仕掛けるなんてこと、連にはお手の物なので否定はできない。っていうかあいつ普通に何でもない感じでやりそうだからマジで怖い。
更木と巽がじっとこっちを見つめる。周囲を見ると、皆も緊張した面持ちでこっちをチラチラと見てきた。連を待たせると後が面倒なので、慌てて通話ボタンを押す。
『おせぇ』
「今そんなに待たせてないだろ」
『一秒で取れよ』
「無茶言うな。あーそうだ、連。今日来るとか言ってたけど…」
『ああ、もう着いたぜ』
……ん?
「え、な、何だって?」
『だから、もう着いたぜ』
は? もう着いた? って…どこにだよ。
場所を訊こうと口を開くと、教室のドアが開いた。
「『よう、馬鹿万里』」
携帯を耳に当てたままそう言ってオールバックの男前――連はニヤリと笑った。俺は呆然としたまま連を見つめる。教室の空気は今までにない緊張感で包まれていた。
プツッと通話が切れた音が耳元で聞こえる。連は携帯を閉じて長い足をこっちに進めてきた。な、何で学校と教室を知ってるんだ。と一瞬考えて思い直す。調べたんだろう、家の力を使って。
「おい、連! 置いていくなよなぁ、迷ったじゃん」
「ふーん、ここが万里の教室ねえ」
聞き覚えのある声が聞こえ、凄く嫌な予感がした。顔を引き攣らせながら教室に入ってきた二人を見る。
「お、久しぶりじゃん万里」
「元気してっか?」
言わずもがな峻と要だ。
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