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「え、あ、あの……」
視線が僕に集中した。口の中が急速に渇いていった。
「ああ! 七瀬くんかぁ」
女の子はぽんと手を叩いて笑う。明らかに引き攣った顔だった。他の子もああ七瀬くんと笑っている。女の子全員僕の名前を今初めて知ったという風だった。
「七瀬くんとどんな話してたの?」
「色んな話だよ」
「い、色んなって?」
「えーと、趣味とか?」
ねっ、とイケメンが僕に話しかける。何が目的か分からないけど、本当にやめてほしい。
「ちなも山邊くんの趣味知りたいなぁ」
ちな、という人――確か千夏という名前だった――はきゃぴきゃぴした声を出して小首を傾げた。普通に見たら可愛いんだろうけど、計算してやってそうだから、まったく可愛く見えない。
「陽一の趣味は読書だってよ。きみ、さっき本が好きとか言ってたよね? 話合うと思うよ」
「あ、え……いや」
だからどうして僕を会話にいれようとするんだ。ちなさんは愛想笑いを浮かべた後、僕をぎろりと睨んだ。
……胃がキリキリする。僕の隣のクラスメイトも女の子たちに相手にされなくてイライラしてるし。
帰りたいなあ、と思った。こんなことをするより、数学は苦手だけど、今日の授業で出された課題をやる方がよっぽど有意義な時間を過ごせそうだ。
…って、あれ? 僕、帰ればいいんじゃないかな?
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