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「ねえ、七瀬くんって趣味とかある?」
「ど…読書とか…?」
「へえ、いいね。俺も本読むの好きなんだ。ジャンルは? 良く読む作者とかいる?」
だ、誰か。誰か助けて……。
僕は例のイケメンに質問攻めにあっていた。トイレで。なに? どうして僕なんかに。
イケメンはにこにこと僕に話しかける。
「あ、ねえ。七瀬くん。名前ちゃんと教えてよ」
「えっ、な、名前…」
「俺は広樹。山邊広樹って言うんだ。七瀬くんは?」
僕の名前なんか知ってどうするのだろう。そんなことより早く席に戻って女の子たちと話した方がいいんじゃ…? 女の子たちも、イケメンを待っているだろうし。
聞こえなかったふりでもしようかと思ったけど、良心が痛んで僕は小さな声で名乗った。
「……陽一」
「よういち。陽一かあ。宜しくね」
ふわりと笑うイケメン。はちみつみたいに甘い顔と声にくらりと眩暈がした。
っていうか、馴れ馴れしいなこの人。いきなり呼び捨て?
「あの……そろそろ戻らない?」
「え? どうして?」
いや、こっちがどうして? なんだけど。なに? この人もしかして戻りたくないの?
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