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 怖っ! 顔を引き攣らせてそのまま見ていると、イケメン共に囲まれている俺に気付くと、更に顔を歪めてドスドス音を立てながら大股で近づいてきた。あまりにも恐ろしすぎて視線を逸らせないまま固まる。

「お前が転入生か」
「……は?」
「よくもうちの役員を誑かしてくれたな」
「いや、あの…」
「会長何言ってんの? 孝ちゃんは転入生じゃないよ」

 「孝ちゃん…?」会長はずいっと顔を近づけて俺をまじまじと見つめる。俺は間近にある整った顔に驚いて体を引いた。

「…お前ら、転入生が好きなんだよな?」

 どうやら俺の周りにイケメンがたくさんいるからそんな勘違いをしたようだ。ていうか会長、転入生がいるのにそんなこと言ったら…。俺はちらりと生徒会役員を見る。

「おい、何で黙るんだよ?」

 会長空気読め。

「好きですよ」

 にっこりと笑った副会長に、転入生がげえっと顔を歪めた。

「そんな気色悪い嘘吐くなよ」
「失礼ですね。嘘ではありませんよ。正確には好きでした、ですが」

 そう言ってこっちを見てくるが、意味が分からない。お前らが転入生が好きだというから、俺がここにいるというのに。何で過去形なんだ。

「あっ、ずるい、副会長だけ! 俺も! 俺も過去形だからね、孝ちゃん!」

 書記が興奮したように身を乗り出してはいはいと手を挙げる。
 いやどういうことだよ。お前さっき、転入生にあーんするのが恥ずかしいからとかなんとか言って俺に無理矢理…。え、もしかしてこれ新手の嫌がらせ?
 胡乱な目で見つめ返すと、書記は顔を青くして言い訳じみたことをつらつらと述べ始めた。何だか浮気がバレた夫のようだ。言っている意味が分からなかったので、俺は書記から視線を外した。転入生と駄犬があくどい顔して笑っていて若干怖い。

「ええと、俺、帰ります。…仕事、ちゃんとしてください」
「えっ、ちょっと!」
「あと、会長様。…無理しないでくださいね」
「お、おう…」

 お前いいやつだな! みたいな顔をしている会長に微妙な気持ちになる。今のは社交辞令のようなものだったから。

「お、孝太漸く帰る気になったかー」
「じゃあさっさと行くぞ」

 がっしりと両腕を掴まれ、俺は顔を引き攣らせる。え、掴む必要ないですよね…?

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