▼ おまけ2
本城先輩と付き合うようになってからも、俺は良く呼び出された。
「好きです!」
ああ、またか。と俺は思う。ぎゅっと目を瞑って俺の返事を待っている姿に胸を痛めながら、俺は頭を下げた。
「ごめん、付き合ってる人いるから」
勿論本城先輩の名前は伏せる。これで諦めてくれと思いながら、しかし、後輩の女子は食い下がる。
「――誰ですか?」
「誰って…」
「先輩、あの不良としか一緒にいないじゃないですか」
あの不良という言い方にむっとする。本城先輩のことを知らないから、見た目で判断してしまうのは仕方ない。仕方ないし俺も同じだったので怒れる立場ではない。俺は静かに怒りを鎮めた。
まあ、それはいいとして。こういう風に誰と付き合っているのか訊かれることが多い。何故そんなことを訊くのだろうか。訊いてどうするというのだ。俺には分からない。奪ってやろうとか、そういう企みがあるのか?
「本城先輩とは仲が良いから。ええと、付き合っている人だけど、言えない」
これで、この学校の人ではないと理解してくれると良いんだけど。できるだけ嘘は言いたくない。だから俺は彼女という表現を使っていないわけだし。
「……分かりました」
ぽろぽろと涙を流し、後輩の女子は走り去っていった。俺は溜息を吐いて、その場にしゃがみこんだ。
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