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 優は何か言いたげな顔をして俺を見たが、溜息を吐くと、優は肩を竦めて去って行った。俺はそれを見送って、今までのことを思い出す。はっきり言って、最初の印象は悪かった。それはきっと向こうも同じだろう。俺は優と本当の兄弟ではないし、昔から知っているわけではないが、短い間優を見てきて、顔目的で近づく奴ばかりだということに気がついた。だから、夏生もそうなのだろうと思ったのだ。
 しかし、夏生を俺自身が見極めてやろうと思って一緒に昼食を摂ってみると、初日から印象はがらりと変わった。見た目も好青年という感じだったし、俺を怖がりつつも言動から性格の良さがにじみ出ていた。
 そして暫くして、俺は優のこと抜きにして、夏生に会うのが楽しみになっていた。それと同時に、夏生が優と付き合っていることがずしりと俺にのしかかってきた。いつまでも夏生を付き合わせるわけにはいかない。だから俺はあの時、認めると言ったのだ。

「……やべ、にやける」

 俺はぱっと口を覆った。あの時。夏生から本当のことを告げられて。それだけでも嬉しかったが、その後の告白は予想外で――予想以上に舞い上がった。
 まさかこの俺が男と付き合うなんて、考えたこともなかったが、なんだかそんなことどうでも良く思えて来る。
 俺はスマホを取り出すと、夏生の名前を探す。そして、口を緩ませて電話をかけた。
 会いてえ、と言えば、赤くなってどもるんだろうな、と思いながら。










fin.

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