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本城先輩は腰を下ろすと、じっと俺を見つめる。
「どういうことだ?」
「実は……彼氏役をやってくれ、と言われて…」
「はあ!?」
かっと目を見開く本城先輩。周りにいる人たち――と言っても、俺たちの周りにはあまり人がいないのだが――がその声にびくりとして何事かとこっちを見てくる。しかし本城先輩が怖いのか、さっと顔を反らした。
俺は身を縮めて、怖々と本城先輩を見上げる。本城先輩は眉を顰め、俺を睨んだ。
「なんだそれ?」
怒っている。当たり前だ。俺はすみませんと誠意を込めて謝罪した。ぐっと一層眉間の皺を深めると、先輩が立ち上がり、ぐいっと俺の腕を掴んだ。
「おい、あいつは今どこにいる」
「え、こ、小竹ですか? 中庭のベンチにいると思いますけど…」
そこに人が来ないから好きらしく、小竹はよくそこにいるようだ。俺が小竹と話すのも大体そこでだ。
「行くぞ」
えっ。ええええええ。
俺は心の中で叫んだ。
「おい優!」
本城先輩が小竹の名前を叫ぶと、ベンチに一人腰かけていた小竹がびくりと体を震わせた。そして勢いよくこっちを見ると、顔を顰めた。
「げっ」
「げっ、じゃねえよ! お前、何考えてんだ!?」
「……え、何、バレたわけ」
小竹の目が俺に向く。俺はというと、状況が理解できず、小竹と本城先輩を交互に見遣った。
…どういうことだ? いや、というかバレたんじゃなくて、バラしたんだ。俺が。
「小竹、俺が――」
「俺が無理やり聞き出した。お前が男と付き合うなんて考えられねえからな」
俺の言葉に被せられた本城先輩の言葉。何で、無理やり聞き出した、なんてこと……。
「……何でこんなことしたんだ?」
「あんたが僕に付き纏うからでしょ」
「付き纏うって、誰が付き纏った!? 俺はお前心配して……」
「そういう兄貴面がウザいの!」
「当たり前だろ! 兄貴なんだから!」
…………えっ?
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