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「な、なに」
いきなり距離が縮まったことに驚いているとか、きょとんと大きな目を丸くする。俺は声を潜めて訊ねた。
「小竹って…恋愛対象は、男、なのか?」
「はっ?」
今度は目が点になったが、すぐに呆れたように細められた。
「…僕はこういう格好が好きだからやってるだけ。女みたいだからって、すぐにそういう風に持っていくのやめてよね」
「え、ご、ごめん…」
いや、確かにそうだけど。そうだけども!
「それなら――何で俺に頼んだ?」
「え?」
「女の子に頼めばよかったんじゃないか。本城先輩に、恋愛対象は女だから諦めてとでも言って断ればいいだろ」
俺と付き合うということは、男がオーケーだとわざわざ言っているようなものだ。何故俺を選んだのか、理由が分からない。
「そ――」
小竹は何か言いかけて、ハッとして黙る。視線を下に向け、言いよどむ。何かを隠している。恐らく重要なことを。
「ま、前それでだめだったの。だからあんたに頼んだわけ」
「ふーん…」
先程の小竹のように、興味なさげな声が出てしまった。小竹も俺が信じていないことに気付いているだろう。しかし咎めることはなかった。そして、この話は終わりとでもいうように、雑誌に視線を落とす。
いったい、いつまで続ければいいのだろう。俺は深く溜息を吐いた。
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