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「……なあ、本当に付き纏ってるのって、あの人なのか?」
「……何、僕が嘘吐いてるって言いたいの?」
「嘘吐いてるようには見えないけど……でも、なんか、そこまで悪い人じゃないというか」

 俺はここ数日のことを思い出す。本城――本城先輩は、昼休みに必ず現れ、俺を食堂に連れていった。二回目からは俺も財布を持っていき、自分で買ったし、あの時の金も払った。本城先輩が俺を見る目はもう敵意を感じないもので、俺も慣れてきたのか先輩を怖がることもなくなった。普通に考えればすぐに分かっただろうこと。……先輩は俺に暴力を振るうことも、パシらせることも、金を巻き上げることも一度だってしたことはない。それどころか、奢ってくれた。
 ちなみに今俺の目の前にいる小竹は、何かセンサーでもあるのか、野生の勘なのか、本城先輩が来る前に去っていく。だから二人が対面しているのを見たことがない。
 本城先輩は、小竹の姿が見えなくても、俺たちの関係を怪しむことはなかった。というか、小竹の話をしなくなった。俺たちは普通に世間話をしながら、食事を摂っている。
 つまり何が言いたいかというと――本城先輩はいい人で、小竹が煙たがるような人ではないということだ。

「あいつに何言われた?」
「別に何も言われてない。俺がそう感じただけ」
「ふーん……」

 小竹は興味なさそうに相槌を打つと、俺から視線を外した。小竹のこの生意気な態度を可愛いって言ってくれてるのに、小竹は贅沢なやつだ。……本城先輩は本当に想っているのに。ずきりと胸が痛む。俺はその胸の痛みに違和感を覚えたが、気にせず小竹に詰め寄った。

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