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ラーメンを買い、お釣りと食券を取ってカウンターへ向かう。
「お願いします」
「はいよ」
おばちゃんに食券を渡し、近くで待つ。背中に視線が突き刺さり、俺は体を強張らせた。見られている。俺はお釣りをぎゅっと握り締め、ドキドキしながらラーメンが出来上がるのを待った。
数分待つと、俺の前にラーメンが差し出された。
「ありがとうございます」
頭を軽く下げ、プレートを手にする。おばちゃんは歯を見せて笑った。
席に戻ると、本城はほぼ食べ終わっていた。
「……早いですね」
「普通だろ」
素っ気なく返すと、残っているご飯を口に含む。俺はそっといただきますと手を合わせ、箸を持った。
ずるずると麺を啜る。食べ終わった本城は、頬杖をついてこっちを見ていた。今までのように睨んでいるわけではなく、ただ見ている、というように感じる。
あまり見ないでほしい。ただ食べているたげなのに、緊張してしまう。そこで、俺は金を返していないことに気がついた。
「あの」
顔を上げると、視線が合った。俺は一瞬言葉に詰まって、ええと、と誤魔化すように発した。ポケットの中からお釣りを出し、差し出す。
「あの、ありがとうございました」
「……別にいい」
別にいい、とは。奢ったことに対して、気にするなという意味だろうか? しかし、何故金を受け取らない。
「お釣り…」
「いいっつってんだろ」
じろりと睨まれる。どうやらお釣りは要らないという意味だったらしい。…というか、両方? それは俺の都合のいい解釈だろうか。
「こ、これは…受け取れません。出したお金も、ちゃんと返します」
少し震えてしまった情けない声で意思を伝える。本城は訝しげに俺を見ると、少し考える素振りを見せた後、金を受け取った。
そして、その直後、本城はプレートを持って立ち上がる。そして俺に何も言わないまま、返却すると食堂を出ていってしまった。
残された俺は、ずずずと音を立て、ラーメンを完食した。
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