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 それにしても親しげに小竹のことを呼ぶなぁ。ぼんやりとそう思っていると、本城は我に返って箸を唐揚げに突き刺した。

「俺のことはどうでもいいだろーが」

 確かにその通りだ。本城にとっては。でも俺は小竹のことを本当に好きなわけではなく、彼氏役をやっているだけ。どういう状況なのかを知るためには必要な質問だった。

「俺、先輩のこと全然知らないので、知りたいなあ、と思って…」

 誤魔化すためそう言うと、箸を突き刺したままの体制でぽかんとする本城。どうでもいいが行儀が悪い。

「は、はぁ…? お、俺を懐柔しようったって、無駄だぞ。お前のことは認めねぇからな」

 そういうつもりはなかったが、否定してじゃあ何であんなこと言ったと突っ込まれると面倒なので苦笑に留めておく。
 ていうか、腹へったな。ちらりと目線を下に遣り、小さく鳴る腹を手で押さえると、俺の目の前にじゃら、と数枚の硬貨が置かれた。え、と顔を上げると、本城はむすっとした顔をしていた。

「……それで、買ってこいよ」
「え、でも…」
「買ってこい」
「はい」

 凄まれて俺はビビりながら答える。硬貨を手に取ると、生暖かかった。――もしかして、ずっと握っていた? それともポケットに入れていた? どちにせよ、用意していたという認識で良いだろうか。……だって、さっき食券を買ったときは、確かに財布から取り出していた。


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