12

 食事していなくて良かった、と思う。

「好きなのか」

 再度問われる。俺は口を引き締めて、頷いた。唐揚げを咀嚼しながら、俺をじろりと睨み付ける。

「どーせお前もあいつの顔が好きなんだろ」

 本城は吐き捨てるように言うと、苛立たしげに舌打ちした。俺は、あれ、と思う。今の言い方。つまり本城は、顔が好き、というわけではないと言うことか。いや、顔以外――性格も含め、好きと言った方が正しいか。……猫被ってる性格だろうか、それとも素だろうか。

「性格もちゃんと好き、ですよ」
「はっ、嘘くせぇよ」

 俺は言い返せない。嘘を吐いているのは間違いないから。少し罪悪感を覚えながら、先程気になったことを訊ねる。

「先輩は……どこが好きなんですか」
「……あ? 俺?」

 本城は目を見開き、呆気にとられたような顔をして俺を見た。

「……あいつは、生意気で――可愛いだろ」

 生意気で可愛い? 俺には本城が言っていることが理解できなかった。いや、まあ、それはいいとして、生意気ということはやっぱり小竹の性格を知っているのか。

 


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