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 ああぁ……言ってしまった。一瞬静まり返り、不良は目を見開いた。

「付き合ってる……だぁ?」

 ぴくりと不良の眉が動く。どう見たって歓迎していない顔。

「……つまり、何。彼氏だって言いたいわけ」
「ま、まあ……そうなり、ますかね?」

 同性同士で付き合ったことがないため、彼氏ということで良いのか分からないが、まあ表すとしたらそれしかなさそうなのでそれで良いのだろう。
 あはは、と乾いた笑みを浮かべると、ダン! と顔の真横で鈍い音がした。びくりと肩が跳ねる。

「…認めねえ」
「みみみみ認めないとは…?」
「お前とあいつが付き合うのは認めねぇっつってんだよ!」

 ぎろっと睨まれひいいと身を縮める。不良の目には怯えた俺の姿が映っていた。
 不良は少し考えるように俺を見つめると、口を開いた。

「お前、名前は」
「俺の名前を知って一体どうしようと…」
「あ?」
「夏生雄星です!」
「なつきゆうせい…」

 確かめるように呟いて、にやりと笑う。

「夏生、お前、覚悟しとけや」

 クックックと極悪人のように笑うと、壁についていた手をポケットに入れ、踵を返す。そして猫背のまま去っていった。
 ……こっっっわ!
 俺はその場でしゃがみ込み、頭を抱えた。

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