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「兎に角、暫く付き合ってほしい。…ああ、別に断ってもいいよ。そのかわりアンタが冷酷人間だって言い触らすけど」
「脅しかよ……分かったって」

 溜息混じりに言うと、小竹はほっとしたように笑う。そして、俺の腕に――自身の腕を絡ませてきた。俺はぎょっとして振り払おうとしたが、こいつ意外と力が強い。こんな見た目でもやっぱり男なんだ。……分かってても、なんだかな。制服が女子のものだから、しっくりこない。声もそこまで低くない……というか、高い方だし。

「動きづらいし男にひっつかれても嬉しくないんだけど」
「仲良いアピール。これでアンタに目をつけてくれたら良いなと思ってさ」
「……目をつけられたくないんですけどー」

 ぼそっと言えば、小竹はちらりと俺を一瞥して、腕に力を込めた。俺はもう振り払うことは諦めた。

「さ、帰ろうよ」

 ぐいぐい引っ張られ、俺は抗うことなく、そのまま教室を出た。

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