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 ――嘘だ。これは、嘘だ。俺はむっとして、逆に室伏の手を掴む。室伏は目を見開いて俺を見下ろす。

「嘘を吐かないって言ったのに」
「カズ…?」
「なんでそんな分かりやすい嘘を吐くんだよ」

 「信用して欲しかったんじゃないのか」続けて言うと、室伏は気まずそうに目をそらした。

「……カズが分かりにくいから」
「…そうかな」
「最近は嘘吐くし」
「室伏だって吐いてただろ」
「うん、まあそれを言われるとちょっと痛いんだけど。でも嘘吐くの良くないって身に染みたよ」

 苦笑して俺を見つめる室伏は、本当に今までの室伏とは違うと感じる。

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