37

「カズって、ほんとに俺のこと好き?」

 放課後。室伏が隣に並んで下校している時、ぼそりと呟かれた言葉。一瞬頭がぼおっとして、すぐに返事する。

「え、な、なんで」
「そう見えないから」
「そう言われても…」

 じゃあどうしたら良いと言うのか。答えないままでいると、室伏はぎゅっと手を握ってきた。ぎょっとして室伏を見上げる。手を振り払おうとしても、力が強くてできなかった。

「なんで放そうとすんの? 別にいいでしょ、付き合ってるんだから」
「そうは言っても…」

 人の目があるわけで。……噂だって立ってるし。
 周りの視線が気になって、ちらちらと確認する。皆がこっちを見てこそこそと話している気がしてならない。

「……ま、いいけどね」
「え…?」
「カズが俺のこと、好きじゃなくても」

 室伏はふっと笑うと、手を放した。


[ prev / next ]



[back]