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……でも。他の奴には酷いから、性格が良くなったわけではない。そう考えると優越感というかなんというか…。室伏の奴は酷いとさんざん言ってきたが、俺も俺で、性格が悪い。
男を好きになるつもりなんてなかったのにな。しかも顔はいいが性格が悪くて嘘吐きな奴を好きになるなんて。友人であることでさえ微妙だと思っていたのに。
「…そこの席の奴、戻ってきたそうにしてるけど」
「俺にどっか行けって言ってる?」
「言ってる」
口にしたのは気持ちとは反対の言葉。室伏は不満そうに俺を見る。俺とは違い、表情豊かで見ていて楽しい。
「ま、もうすぐ授業始まるし。席戻るよ」
ひらひらと手を振り、自分の席へ向かう。その様子をじっと見つめ、頭を抱える。室伏も変わったが、俺も変わったところがある。……嘘を吐くようになってしまったのだ。今までの室伏みたいに。室伏が素直な反応を返すようになったから、嘘を吐くことが楽しくなってしまった。あいつも今までこういう気持ちで嘘を吐いていたのかも、と思ったが、俺はそんなに反応を返さなかったような気がする。
なんで室伏は俺に嘘を吐いていたんだろうか。今までどうでもいいと思っていたけど、ちょっと気になってきた。
「村谷」
ふらふらとやってきたのは前の席の奴。名前は知らない。でも向こうは俺の名前をちゃんと知っているようだ。
「なんか室伏って、最近雰囲気変わったよな…村谷はなんか知らない?」
「さあ、知らない」
思わず口角が上がる。
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