▼ 32
それから一ヶ月。なんと俺と室伏はまだ付き合っていた。いや、信じるとは言ったが、やはり心配だったのだ。しかしこの様子だと、これからも……と希望がわいてくる。
…そして、室伏はというと。
「は? 煩いんだけど」
嘘を吐くのをやめていた。……正確にはやめてはいないが、今のようにずばすばと言う奴になっている。
「ひ、ひどい……!」
名も知らぬ女子は目に涙を溜めて室伏を責める。それを面倒くさそうに見下ろす室伏。
「だってあんたに興味ないし」
「なんで、だって前…」
「前? なんかあったっけ」
ふ、と笑う。しかしそれは笑顔ではなく、嘲笑だった。何故いきなり笑みを浮かべるのも嘘もやめたのか分からないが、こんな調子でいつか刺されないかと心配になる。
俺は教室から廊下で行われている修羅場めいたものを眺め、溜息を吐く。その時、室伏と目が合った。
「あ」
ぱっと明るくなる顔。室伏は俺に向かって手を振った。
「カズ、おはよー」
もう女子は視界に入っていないというように、室伏はこっちしか見ない。と思っていたら、女子が室伏の顔を叩いて走り去っていった。
[ prev / next ]
[back]