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 予想外の反応だった。こんな反応って初めてではないだろうか。

「あ、あの。お前が俺のこと、本当に好きってことだったら、だから」

 慌てて付けたすと、室伏はにこにこしながら答えた。

「答えなんて分かりきってるじゃん」
「いや、分かりきってはないだろ。お前嘘ばっかり吐くし」
「そうかな?」

 こいつ、すっとぼけやがって。今までどれだけの人を嘘で泣かしてきたと思っているんだ。

「つまり、カズは俺のことが好きってことでいいよね」
「えっ」

 ぽろ、と箸から卵焼きが落ちる。俺はちらちらと周りを見て室伏に顔を少し近づけた。

「ま、まあ、そういう…感じというか、何というか」
「へえ、へえ。そっか」

 にこにこと笑う室伏は本当に嬉しそうで。本当に俺のことが好きなんだと確信した。これでも室伏とは付き合いが長いから、これは嘘を吐いていないと俺には分かる。
 ――信じて、いいんだと思う。俺は笑い続けている室伏を一瞥し、照れ隠しでご飯を無言で食べた。



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