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「何してんだよ!」
「だってそこにカズの手があったから」
「あったからって舐めるな!」
ごしごしと室伏の制服で濡れた部分を拭いてやる。流石にこれには何か言ってくると思ってたが、何も言われないどころか表情も変わらない。嫌いな奴の手を舐めたりしないだろうし、いい加減アクションが起きてもいいのに何もないのはおかしい。こういう風に周りを気にしない行動は起こすけど…。それはそれで、何とも思ってないのに普通やるか? と思う。
…もしかして。室伏って、本当に俺のことが好きなのか? そう思うと、急に落ち着かなくなった。
「カズ、顔赤いけど」
「えっ、嘘」
ぱっと顔を触ってみると、確かに熱い。室伏の言う通り赤くなっているのかもしれない。俺はぱたぱたと手で顔に風を送った。
室伏はそんな俺を見ながらパンの袋を開けた。それと同時に甘い匂いが漂ってきて、俺は少し身を引いた。甘い物が苦手なわけではない。弁当を食べながら匂いを嗅ぎたくないということだ。
手を合わせ、心の中でいただきますと呟く。
「カズ、本当にさっきの女と何ともないんだよね」
まだ平野さんの話をするか。俺は卵焼きを口に含みながら頷く。室伏はにこりと笑う。
「ふーん、ならいいや」
そんなに確認したいことか? と思いながら咀嚼する。
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