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「なんであいつと一緒にいられるの!?」

 なんで、と言われてもなあ。何も感じないとしか
。普通は怒ったり悲しんだりするだろうけど、俺はそういうことに淡白なのだ。それをそのまま平野さんに言うと、平野さんは信じられないという顔で呟いた。

「凄いねあんた」
「いや、別に…」

 「いやいや、凄いって」からからと笑う平野さん。付き合っていた時は分からなかったけど、平野さんはもしかして、普通にいい人なのではないだろうか。

「――なにしてんの」

 低い声が真後ろで聞こえ、俺と平野さんは固まる。俺の後ろを見上げた平野さんの顔がみるみるうちに青ざめていく。

「カズ」

 恐る恐る振り向くと、俺を責めるように、じろりと見下ろしている室伏と目が合った。

「む、ろふし」
「カズ、なにしてんの?」
「何って」
「誰、この女」

 ――怒っている。ごくりと唾を飲み込んだ。

「だ、誰って酷くない!?」
「あれ、知り合いなの?」
「知り合いもなにも……もういい。帰る」

 声を荒げたが、その後深い息を吐いて、ぎろりと室伏を睨んだ。そして立ち上がり、俺を一瞥する。

「村谷くん、友達は選んだ方がいいんじゃない」

 そうして平野さんは、教室から出て行った。

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