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 躊躇なく答えたことに驚きを隠せないでいると、平野さんは俺の顔を見て少しだけ得意げな顔をした。

「まあ、あんなこと言われたらね」
「あんなこと?」
「私より村谷くんの方が百倍好きとかそういう感じのこと」
「……え、俺?」

 突然俺の名前が出てきて目を丸くする。言っていることは十中八九嘘だろうが、ちょっと嬉しい。単純だな、俺って。

「だから付き合えない、分かった? ブス……とも言われた」
「ひ、酷いこと言うね」

 笑顔で言っているのが想像でき、俺は口を引き攣らせた。平野さんは「でしょう?」と体明記混じりに言った。

「だから私はもういいの。なんか、今までの子がすぐに別れたのも納得できたし」
「ああ、そう…。で、何で俺に?」
「あいつとよく一緒にいるでしょ。最近は特に…。なんか、村谷くんに告白するなって色んな子に言ってるみたいだし」
「え?」

 俺に告白するな? 室伏がそう言っているのか?

「知らないんだ。何のつもりだろうね? 村谷くんが告白されるようになったのももとはと言えばあいつの仕業らしいし……って、あ」

 平野さんは言い終わってから、はっとした顔で口を押さえた。上目で俺を窺ってくるので、俺は苦笑した。

「知ってるから大丈夫」
「し、知ってるの!?」

 平野さんはぎょっとして目を見開いた。

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