24

 平野さん。平野さんが、今更俺に何の用だと言うのだろう。じっと見上げていると、平野さんは周りを気にしていた。
 俺が今日教室で昼飯を食うと言ったので、室伏は今昼飯を買いに行っている。無理矢理学食に連れて行かれると思っていたので、少し意外だ。
 話は戻るが、平野さんが気にしているのは室伏だろう。

「室伏は暫く戻ってこないと思うよ」

 いつまでも気にして室伏が戻ってきても面倒なことになりそうなので、いないことを告げる。平野さんはばつが悪そうな顔をして、再び俺に視線を遣った。
 周囲は俺たちをちらちらと盗み見する。別れたということも、平野さんが室伏に断られたこともクラスメイトは知っているので、気になるのだろう。しかし、平野さんが気になるのは室伏だけのようだ。

「……あのさ、あんたあいつのことどう思ってるの」
「あいつ?」

 俺たちの共通の人物は室伏一人しかいないが、平野さんが室伏のことをあいつ呼ばわりするだろうか。確認のため聞き返すと、平野さんは少しだけ眉を顰めた。

「室伏だよ」
「平野さんは室伏のこともう好きじゃないの?」

 質問に答える前に、気になったことを訊ねると、平野さんは大きく頷いた。

[ prev / next ]



[back]