▼ 22
「本気なんだけど、どう」
「どうって、信じられるわけないだろ」
「俺が嘘吐きだから?」
「っ」
室伏の言葉に目を丸くする。じっと俺の目を見つめてもう一度「俺が嘘吐きだから」と口にした。今度は疑問系ではなく、俺だけではなく自分に言い聞かせるようなものだった。
「――そうだって言ったら、お前はどうするんだ」
「じゃ、カズだけには嘘吐かない。それでいいだろ」
「お、俺だけって」
うわ。俺、やばいな。こんな奴の言葉に嬉しくなるなんて。やばいな。
というか、これが嘘なのではないだろうか。本当に俺だけなのだろうか。こいつの性格を知っているだけに、不安だ。でも、いつも浮かべている笑みがさっきからないのを見ると、本当なのではという気持ちが強くなる。
「カズ」
「……少し考えさせてくれ」
急かす室伏。困った俺は、結局決めることができなかった。数秒の沈黙の後、室伏はにこりと笑う。
「分かったよ」
「ほら、お茶飲んで」そう言われて、喉がからからになっていることに気がついた。俺は無言で頷いて、コップを手に取る。視線を感じながら、俺はお茶を飲み干した。
[ prev / next ]
[back]