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「本気なんだけど、どう」
「どうって、信じられるわけないだろ」
「俺が嘘吐きだから?」
「っ」

 室伏の言葉に目を丸くする。じっと俺の目を見つめてもう一度「俺が嘘吐きだから」と口にした。今度は疑問系ではなく、俺だけではなく自分に言い聞かせるようなものだった。

「――そうだって言ったら、お前はどうするんだ」
「じゃ、カズだけには嘘吐かない。それでいいだろ」
「お、俺だけって」

 うわ。俺、やばいな。こんな奴の言葉に嬉しくなるなんて。やばいな。
 というか、これが嘘なのではないだろうか。本当に俺だけなのだろうか。こいつの性格を知っているだけに、不安だ。でも、いつも浮かべている笑みがさっきからないのを見ると、本当なのではという気持ちが強くなる。

「カズ」
「……少し考えさせてくれ」

 急かす室伏。困った俺は、結局決めることができなかった。数秒の沈黙の後、室伏はにこりと笑う。

「分かったよ」

 「ほら、お茶飲んで」そう言われて、喉がからからになっていることに気がついた。俺は無言で頷いて、コップを手に取る。視線を感じながら、俺はお茶を飲み干した。 


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