15

 一週間が経った。俺は相変わらず室伏と付き合っている。何故か室伏は俺に別れを告げない。それどこか、今まで以上にべったりとくっついてくるようになった。そして俺も、日に日に落ち着かなくなっていった。室伏に好意を持っている風を装って別れさせようとしてみたが、結果は言わずもがな。早く別れないとやばいような気がする。室伏は時々、恋人に向けるような顔を俺に向けるのだ。嘘の恋人ではなく、本当に愛している恋人に向かって。嘘吐きな室伏のことだ。これは演技かもしれない。そして、俺はその演技に振り回されているのかもしれない。
 いったい室伏は何を考えているのだろうか? 正直、こんなに続くとは思っていなかった。俺がそれとなく訊くと、室伏はお得意の嘘と笑顔でかわしてしまうため、真実は分からなかった。

「カズ、帰ろう」
「…ん」

 今日もまた、恋人が続行したまま一日が終わった。室伏から声をかけられ、俺は立ち上がる。そうして一緒に教室を出ると、肩を並べて歩き始める。
 肩が少し触れ合って、俺は少しだけどきりとした。

「今日、ぼーっとしてたよな」
「え!?」

 肩に集中していると、室伏に話を振られた。驚いて声を上げると、室伏は目を瞬かせる。そしてにやりと笑った。

「ほら、今もぼーっとしてる」
「……いや、別にしてない」
「してただろ。数学の時、先生に指されても気付いてなかったし」

 俺は黙った。そして小さく呟く。

「その時と、今だけだろ」
「俺にはずっとぼーっとしているように見えたけどな」

 室伏はじっと俺の目を見つめる。見透かされそうで、俺は目を逸らしてしまった。

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