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 注文を済ませると、室伏と共に席につく。室伏は頬杖をついて、ふうと息を吐く。なんだか珍しく疲れているように見える。

「どうしたんだ?」
「ん? 何が?」
「なんか悩んでることでもあるのか?」
「別になにもないけど」

 あ。戻った。俺はなんだかモヤモヤとして眉を顰めるが、室伏はにこにこと微笑む。

「……そうか」

 俺もそれ以上訊かないことにする。
 少しすれば、カレーと味噌ラーメンができたようで、注文時に渡された紙に書かれている番号が呼ばれた。俺たちは立ち上がると、それぞれ注文した料理を持って再び席についた。

「いただきます」

 意外なことに、というのは失礼かもしれないが、室伏は両手を合わせて声を出してから食べ始める。俺も手を合わせ、小さくいただきますと言ってからスプーンを取った。
 ずるずると麺を啜る音が耳に入る。周囲はざわざわと騒がしいが、俺たちの間に会話はない。少し気まずいが、室伏は全く気にしていなさそうだった。手を休めじっと室伏を観察していると、視線に気づいたのか、室伏が上目遣いに俺を見る。その瞬間、言いようのない感情が俺の胸を占めて、俺はさっと目を逸らした。そうすると、すぐに収まった。
 いったい何だったのか。あまり考えたくない。俺は室伏からの視線に気付かないふりをして、カレーをひたすらに食べ続けた。

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