12

 室伏はまだ何か言いたそうな女子たちから視線を外し、こっちを見る。目が合うと、にこりと微笑まれた。そして立ち上がると、俺の方に向かってくる。

「カズ、学食行こう」
「……え、学食?」

 俺は眉を顰めて室伏を見上げる。俺は人混みが嫌いなので、学食はほとんど行かない。というか、俺はコンビニで弁当を買っているので、普段は教室で食べている。一人で。ぼっち飯ってやつだ。ちなみに誰かと付き合っていても、である。
 室伏が誰と食べているのかはよく分からない。恐らくその時付き合っている人が、友達か……。

「……なんで俺?」
「なんでかは、カズは分かると思うけど?」

 探りを入れるが、流石は室伏。さらりと交わされてしまった。

「ま、いいよ」
「じゃあ行こう」

 立ち上がると、室伏に手首を掴まれる。え、と思った瞬間。ぐいっと引っ張られた。

「ちょ」
「さー行くぞー」

 室伏の顔は見えない。しかし、どこか嬉しそうに聞こえたのは気のせいだろうか。

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