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「なんで?」
「気になる?」

 にい、と笑うと肩を回してきた。ずしりと体重をかけられ、よろめく。

「……別に気にならないけど」
「カズひどくね? 俺にもっと興味持ってよ」

 ひどいと言いながら、まったく気にしていない様子の室伏。

「あの子、えーと、平嶋さんだっけ? なんか、カズのことすげー悪く言うからさぁ」
「平野さんね」
「ああ、平野さん? あ、そう」

 うわ、めっちゃどうでも良さそう。いや、というか。俺のことを悪く言うから? そんなの、今までだってあっただろう。なんで平野さんだけ? しかもそんなこと言っても嘘くさいし。

「…ま、いいけど」

 俺は考えるのをやめ、室伏の腕を退かす。

「――カズ、俺と付き合わない?」
「……は?」

 ぴたりと体が止まる。今こいつは、何て言った?

「俺、カズのこと好きなんだけど」

 そう言って、室伏は楽しそうに笑った。

「……俺のことが好き、って」
「そのままの通りだけど? だから、俺と付き合って」


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