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 数日が経った時、俺は平野さんに呼び出された。もうそろそろ来るだろうと思っていたから驚くことはなかった。しかし告白の時と同じく教室に来るのではなく、手紙が入れられていたのが気になる。
 そして呼び出された場所へ向かった俺は、珍しくも動揺してしまった。

「ど、どうしたの」

 声をかけると、平野さんは――真っ赤な目で、俺を睨んだ。

「なんでなの!?」
「…なんでって」

 俺の質問は流され、良く分からないが責められている。

「あんたと付き合えば、室伏くんと付き合えるんじゃないの!?」
「――室伏」

 一体誰がそんなことを言いだしたのか。しかし俺が付き合った後室伏と付き合っているのでそう言われても仕方ない。
 …待てよ。ということは。平野さんは室伏と付き合えなかったのか? あきらかに泣いた後だし。俺は室伏の顔を頭に浮かべながら眉を顰めた。

「意味わかんない、なんで私だけ…っ」

 単純に、平野さんは無理なタイプだったんではないかとも思うが、室伏は何を考えているのか良く分からない男だ。
 平野さんは最後に俺を親の敵でも見るような目で睨んでから、走り去ってしまった。

「あーあ」

 後ろからくすくすと笑い声が聞こえた。振り向くと、楽しそうに笑う室伏の姿があった。いつからそこにいたのだろう。まあ、いるような気はしていたけど。
 女性を泣かせておいて、楽しそうに笑うのはどうなんだろうか。

「室伏、平野さん断ったんだ」
「ん? なんか悪かった?」

 悪くはないけど。平野さんに同情してしまう。なんでこんな男を好きになるのか。やはり顔か。

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