6

「室伏くんは休日とか何してるの?」
「俺は特になんもしてないなあ。な、カズ」
「え、ああ。まあ」

 何で俺に話を振るんだと思いながら頷く。俺は和孝という名前で、室伏にはカズと呼ばれている。初対面の時から。馴れ馴れしいと思ったけど、別に呼ばれて不快でもなかったのでそのままにしている。

「室伏くんって犬飼ってるんでしょ? いいよね、犬」
「そう? 俺は猫の方が好きだけど。な、カズ」
「……あ、そう」

 あ。平野さんの口元が引き攣った。しかし室伏は全く気にしていない様子だ。気付いていないということも考えられるけど、まあ、それはないだろう。完全に面白がっているのが伝わってくる。
 と、いうか。平野さんはあからさますぎではないだろうか。そして室伏も。呆れかえっていると、室伏が何か思いついたというように、あ、と声を出した。

「平野さん」
「あっ、なに?」

 ぱっと顔を明るくさせる平野さん。室伏はにこりと笑った。

「平野さんはカズのどんなところが好きなの?」
「え?」

 ――ああ、こいつ、やっぱり酷い男だ。平野さんが室伏のことを好いているのは誰が見ても分かるのに。平野さんが可哀想だろ。と思いながら、やはり口には出さなかった。俺的には平野さんがどうなってもいいわけだし。
 だからたとえ平野さんが困ったように俺を見たとしても、俺は知らんぷりをするのだった。

[ prev / next ]



[back]