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「村谷くん」

 放課後になると、教室に女子がやっていきた。どこかで見た顔だと思えば、そうだ、彼女になった平野さんだ。

「一緒に帰ろ」
「うん」

 いいけどと了承すると、平野さんはさっと視線を違う方向へ遣った。俺もそっちへ視線を向けると、室伏と目が合った。室伏は俺たちの元へやってくる。

「帰るの?」
「まあ」
「あ、私、平野っていうの。室伏くんだよね」

 先程まで気が強そうだったのに、一気にしおらしくなったものだ。俺は冷めた目で二人を見守る。室伏は人好きのする笑みを浮かべた。

「俺のこと知ってんだ。宜しくね」
「うん」

 楽しそうに会話する一応俺の彼女と友人。そして一人蚊帳の外の一応彼氏である俺。これは――すぐにまた別れることになりそうだ。
 別にいいんだけど。と思いながら、鞄を持ち上げる。このまますっと抜けていこうお思ったのだが、室伏に腕を掴まれた。

「平野さん、俺も一緒にいいよな?」
「もちろん!」

 嬉しそうに笑う彼女と目が笑っていない友人。俺は二人に挟まれて、教室を出た。


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