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どうして室伏は嘘を吐くのだろうか? そしてどうして俺に構うのだろうか? それを訊いたことはないし、室伏も何も言わない。
今まで何一つ特筆できるようなものがない奴だったのに、なんでだろうか。不思議で仕方なかった。
「室伏、今彼女いるんだっけ」
「あ、別れたよ」
さらっと口から出てくる言葉に俺は目を細めて室伏を見た。にこにこと笑っており、全然悲しそうにも未練があるようにも見えない。まあ、言い方も軽かったし。
「何で別れた?」
「だってウザかったし」
「じゃあなんで付き合ったんだよ」
「なんでだと思う?」
室伏はにいっと笑う。俺に教える気はないようだ。それとも、俺が知っているから、言わないだけか。そう。俺は知っているのだ。室伏が付き合う女は――俺が付き合った女。つまり別れた女は室伏と付き合うということだ。
こんな状態で、俺の変化に室伏が関わっていないということはあり得ない。しかし室伏がわざとこういうことをやって、一体何になる? 俺は理解できない。
「もう名前も忘れちゃったな」
「酷い男だな」
俺の言葉に室伏はけらけらと笑った。酷い男だと思う。そして、それをどうでも良いと思っている俺も――十分酷い男だろう。
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