8

 まあ、皆が知らないなら知らないで…と思っていたが、次の日、俺は戸部に話したことを後悔する。

「……綾斗」
「俺、言ってねえぞ」

 綾斗が部屋に来て、一緒に登校すると、何だか騒がしかった。どうしたんだと思いながら進んでいくと、掲示板に学園新聞が貼ってあった。そしてその学園新聞の一面を飾っているのは俺と綾斗のことだった。
 綾斗が言っていないということは。……俺が戸部に話したからか。戸部が話したのか? それとも誰かが聞いていたのか?

「会長! おめでとうございます!」
「漸く会長の片想いが実ったのか…!」
「今日は赤飯ですね!」
「宴だー!」

 ……いや、あの、騒ぎすぎだろう。恥ずかしい。俺は顔を上げられなかったが、綾斗は平然としていた。…くそう。というか、本当に皆知っていたんだな。綾斗の気持ち。改めて驚く。

「何も心配なかっただろ?」

 顔を上げると、綾斗が目を細めて笑う。俺も笑い返して、頷いた。

「でも俺、まだ本気でお前のこと好きって分かったわけじゃないから」

 ――本当はもう、分かったけど。思わずそんなことを言ってしまった。綾斗は一瞬目を瞬かせて、不敵に笑う。

「じゃ、これからべた惚れにさせてやる。覚悟しとけ」

 のぞむところだ、と返そうとした俺は、目の前に影ができて固まる。ちゅ、と口がひっついて、周りで歓声が上がった。
 俺は無言で綾斗を力いっぱい殴った。










fin.

変な終わり方ですが、本編で書きそびれたことはかけたかな…?と思います。
改めて、リクエストありがとうございました!



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