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「えーと……あのな、戸部」
「はい!」

 付き合ったということを告げようとして、口籠る。なんだかちょっと恥ずかしい。

「何ですか?」

 数秒黙っていると、戸部は不思議そうに首を傾げる。俺はこほんと一度咳ばらいをして、早口で告げた。

「綾斗と付き合うことになった」
「あ、そうなんですか……ええ!? そうなんですか!?」

 一度ふむふむと頷いた戸部は一瞬固まると、目をかっと開いて俺に詰め寄る。

「一体いつの間に!」

 なんか、それさっきも訊かれたな…と苦笑しながら事の流れを掻い摘んで話した。相槌を何度も打ち、時々驚いたり喜んだりしながら戸部は話を聞いてくれた。

「いやあ、でも、良かったです」
「…良かったんだろうか?」
「良かったですよ! そりゃあもう!」
「あ、ああ…そう」

 そんなに力いっぱい肯定されると、なんかそうかもしれないと思ってしまう。

「あ、というか、日向さん」
「ん?」
「まさか…それ知らないの僕だけとかじゃ…ないですよね?」
「……多分」

 もし言っていたらもっと騒ぎになっているだろうからな。綾斗は目立つし、なにより会長だ。そうやって言葉を続けようとしたが、そこには戸部はいなかった。

「……ええ…」

 ……そんなにショックだったのか。いや、まあ、そうか。戸部の立場だったらそうだな。うん。……なんか、ごめん。
 

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